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FOLIO ROBO PROについてくわしく知る

リバランス

「FOLIO ROBO PRO」では、お客様一人ひとりにとって最適な資産運用を実現するため、毎日お客様ごとにポートフォリオの状況をモニタリングし、リバランスなどのメンテナンスを必要に応じて行っています。運用開始時に最適ポートフォリオを構築したとしても、その後の運用を経て、ポートフォリオ内の配分比率は徐々に変化しています。また、個別銘柄に対するAlpacaJapanの予測も日々更新されるため、最適な運用比率は時事刻々と変化していきます。そこで「FOLIO ROBO PRO」では市場環境に合わせて定期的なリバランスと臨時的なリバランスを使い分ける仕組みを導入し、Adaptive Rebalance Control(ARC)と名付けています。

まず原則として1ヶ月間リバランスが行われていない場合にお客様のポートフォリオの配分比率を最適な状態に戻すようリバランスを行います。そしてリーマンショックやコロナショックのように市場の変動が激しい局面になったと判定した場合には臨時的なリバランスも行われます。この平常時と変動の激しい局面を判別するためにARCではレジームスイッチングモデルを活用しています。

市場にはリスクオン/リスクオフというような局面があることは広く受け入れられた考え方だと思います。レジームスイッチングモデルはそういった局面の変化を考慮にいれた時系列データを扱うための統計モデルです。レジームスイッチングモデルの一つであるマルコフスイッチングモデルを使ってマクロ経済における景気循環を実際のデータから推定する研究5をはじめ、ファイナンス理論の分野でも広く応用が研究されてきました。米国株式と米国債券の資産価格の推移(収益率の同時分布)から実際の市場における局面を推定する研究も行われています6。ARCではこのレジームスイッチングモデルを「FOLIO ROBO PRO」で運用している銘柄を含む複数の資産の収益率に適用することで、臨時リバランスを行うべき局面変化を推定することに利用しています。

具体的にはMarkov-switching Vector Autoregression(MSVAR)と呼ばれるマルコフスイッチングモデルの一種を使用しています。このモデルは直接観測することはできない市場の各局面を表す状態変数sと状態変数の時間発展を記述する状態方程式、実際に観測される資産の収益率のベクトルrと観測値の生成過程を記述する観測方程式から構成されています。t時点における状態変数をst, 観測値をrtと表します。次の時点での状態変数の値は一つ前の状態にしか依存しないというマルコフ性を仮定し、t時点で各状態である確率を並べたベクトルπtと遷移行列をPを使って状態方程式は以下のように記述されます。

𝜋𝑡+1=𝑃𝜋𝑡

また観測値である収益率は状態stが与えられた下でベクトル自己回帰モデル(VARモデル)に従うと仮定し、観測方程式は以下のように記述されます。

𝑟𝑡=𝜇𝑠𝑡+𝐴1,𝑠𝑡𝑟𝑡1+𝐴2,𝑠𝑡𝑟𝑡2++𝐴𝑝,𝑠𝑡𝑟𝑡𝑝+𝜖𝑡

ただしμstは状態stにおける収益率の期待値、An,stは状態stにおけるnステップ前のデータからの影響を表す係数行列、pは考慮するラグの数、εtは多変量正規分布に従う観測誤差を表しています。

ARCでは市場における局面の数とVARモデルにおけるラグの値を情報量基準を用いてデータから選択すると共に、各時点における状態遷移とモデルのパラメータをEMアルゴリズムによってデータから推定しています。MSVARモデルから最もボラティリティの高い局面に変化した可能性が高いと判断された時に臨時リバランスを行います。データとして日次の収益率を用いることで、日々の局面変化を監視することが可能になり、機動的な臨時リバランスを実現しています。

  • James D. Hamilton, (1989), “A New Approach to the Economic Analysis of Nonstationary Time Series and the Business Cycle“.
  • Guidolin, Massimo, and Allan Timmermann,(2006), “An econometric model of nonlinear dynamics in the joint distribution of stock and bond returns.“